HIVに感染しているかどうかは血液検査をしなければわかりません。それでは、実際にHIV陽性と知った人たちは、どのような経過やきっかけで検査を受けたのでしょうか?
◆なぜ、どこで検査を受けたか
「不安に思ったら保健所・検査所で検査をしましょう!」そんな呼びかけや行政のポスターを目にします。どれくらいの人がそのような、「不安に思う→自主的に検査を受ける→陽性と知る」といった道程をたどっているのでしょうか?
私たちの調査によると、検査が行われた場所は、病院がもっとも多く、外来・入院中をあわせて4割、保健所と検査所はあわせて3割強、クリニック・診療所、献血会場、検査イベント、自宅(検査キット)と続いています。
検査を受けたきっかけは、「気になる症状や体調不良」、「エイズ発症や関連疾患らしい症状」、「定期的に検査を受けていた」、「他の病気や手術にともなう血液検査」、「献血」「感染したと思われる行為があった」「他の性感染症にかかった」、「交際・結婚にむけての事前確認」「セックスの相手が陽性だとわかって」等々、多岐にわたります。
検査を受けた場所ときっかけをかけあわせてみると、実に数十通りのパターンになります。ということは、「不安に思う→自主的に検査を受ける→陽性と知る」というのは数あるパターンの1つにしか過ぎません。医療機関のHIVに関する専門性や体制も様々、検査を受ける人の事情や体調も様々です。ですから、それぞれの状況にあわせた対応のノウハウが蓄積され、検査関係者に共有されることが重要となります。
◆どのように陽性告知を受けたか
HIV陽性と告知される状況はいったいどのようなものなのでしょうか?検査場所やきっかけが多様であるということは、医療機関の体制も陽性告知をする担当者もおそらく様々でしょう。告知担当者の職種、知識、人柄、態度はどうなのでしょうか。どのように告知をされて、どんな情報提供を受け、どんな資料をもらっているのでしょうか?
私たちは、告知担当者の対応について、告知を受けた人がどう感じどう評価しているかを詳しく調べました。告知担当者から受けた印象については、「落着いていた」が8割、「信頼できる感じがした」などが6割以上ある一方で、「自信がなさそうだった」、「かかわりたくなさそうな感じだった」なども25%ほどでした。総合評価は、全体の7割弱が「とても良かった・良かった」と回答していて、告知担当者から受けた印象についての個々の項目(例えば「親身に接してくれた」「落ち着いていた」「質問や話がしやすい態度だった」など)と強い相関がありました。担当者の職種は医師が75%、看護師・保健師が10%、他にカウンセラー・臨床心理士、薬剤師・検査技師などです。
陽性告知までの状況について、いくつか気になる点を拾ってみましょう。検査を受けるにあたって「HIV感染症についての説明があったか」いう質問には、4割弱が「説明はなかった」と答えています。多くの場合、検査についての説明はされていても、もし陽性だったらと想定して病気の予後などの説明はされないことが多いのです。また、原則的に本人の承諾がなければ勝手にすることができないはずのHIV検査ですが、7.5%の人が「検査の承諾をしていない」と回答しています。承諾した覚えがないままにHIV陽性と知ることもあるのです。
また、陽性告知の環境を具体的に聞いた質問では、7.5%の人が「大部屋、廊下、ナースステーションなど機密性の低い場所」でHIV陽性と知らされており、病院(入院中)にしぼってみると約2割にもなります。また、電話で知った人も3.3%ありました。